Artist

アーティスト

山田勇人

日本

作品コンセプト

風は何処で生まれたか

草はそこに生えていた。風に揺れ、別の力に揺らされ、かすかな光に触れていた。風が強まる。厚い灰色の雲が空を覆い、上空で起こることを隠す。この後の強い雨を予感させる。これから何が起こるのだろう。これからの未観測の世界の変化を感ずる。その瞬間、通りすがりの車が横切った。
Duration: 2'55"
Year: 2025
Direction: YAMADA Hayato

 

接近

生物が誕生する直前の数秒。まだ言葉も物語もない世界で、光が輪郭を持ちはじめ、揺れながら近づいてくる。到達の瞬間、何がわかり、何がわからないのか。わからないものが、わかるものへと変わる直前の境界。その境界線は、始まりの震えであり、命が語りはじめる前の呼吸である。カメラ・オブスキュラの技術を応用し、実際の景色を通して、語りの誕生の前に広がる未知の領域を映し出す。
Duration: 2'55"
Year: 2025
Direction: YAMADA Hayato

 

Air

そこに乾いた植物の姿があった。数千キロ離れた海面で暖められた空気が上昇し、気圧差によって生じた風が、海を越えてこの地に到達する。その流れは数キロメートル上空を通り、地形や温度差に導かれて地上へと降りてくる。乾いた風に揺れ、植物はまた元の位置へと戻る。暗闇の中に暮らしの灯がともり、その手前に枯れたシルエットが浮かぶ。どれほど強い風にさらされても、繊維質のその命はそこに留まり続ける。やがて、通りすがりの車が横切った。
Duration: 2'55"
Year: 2023
Direction: YAMADA Hayato

 

プロフィール

関西拠点の映像作家。時間の層や光・風・振動の微細な変化を見つめ、映像詩を制作する。スタジオSCIREを主宰し、撮影から編集、展示設計までを一貫して手掛ける。ドキュメンタリー・CM制作を通じて様々な国籍や職種の当事者と向き合い、多くのインタビューを重ねてきた。その経験から、人が語るときに生まれる「語られたこと/語られなかったこと」の間に注目する。そこには、後天的に獲得され変化し得るものと、深く刻まれたまま残るものがあり、それらが社会の変化とどのように響き合っているのか、映像作りを通して考察している。

Webサイト: https://scire.jp, https://hayatoyamada.com
Instagram: https://www.instagram.com/scire.h/

プログラム

展示会場