【9/26(金)~10/13(月)】リン・サン(Linh San)滞在制作展示のお知らせ
現在西成エリアでのアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加中のベトナム人アーティスト、リン・サンの滞在制作展示を、9月26日(金)から喫茶あたりや2階で開始いたします。
8月12日からの滞在で、リン・サンが様々な人々や地域での営みとの出会いを起点に制作した、陶芸作品群および編み物にまつわる新作をインスタレーションとして発表いたします。
【9月25日(木) 喫茶あたりや2階 展示替えのお知らせ】
リン・サンの滞在制作展示の開始に伴い、9月25日(木)は喫茶あたりや2階は展示替えのため入場不可となります。
1Fの喫茶エリア、および1F展示スペースは無料でご覧いただけます。

リン・サン 滞在制作展示 2025年9月26日(金)-10月13日(月)
第一更:月を待つ(Canh 1: Đợi trăng)
リン・サンはすでに一か月以上西成地区で暮らし、人々と交流を重ね、この土地の生活や人々との対話をもとにいくつかの作品を制作しました。
〈第一更:月を待つ〉は、山王ハーモニカ長屋の築95年近い家屋「喫茶あたりや」の二階に展示されるインスタレーションです。作品は陶芸とドローイングで構成され、それぞれが異なるかたちで「時間」を喚起します──秋の柿、記憶、そして物質の変容。
10月6日からは新たな作品も追加展示されます。
*第一更とは古代中国に由来するアジアの伝統的な時刻法で、夜を2時間単位で五つの「更」(こう)に分け、第一更は午後7時に始まり、最後の第五更は午前5時に終わります。
出展作品リスト
《come into sight(見えてくる)》 陶芸
床の間の空間に、作家が遊び心ある介入をおこないます。
《overcast(曇り空)》 和紙に墨と灰
記憶と母性に関する過去の作品から発展し、本プロジェクトでは、作家が西成で出会った数人の女性に「母や祖母について抱く感情、イメージ、記憶」を尋ねました。質疑は英語から日本語へ、そして日本語から英語へとアシスタントが翻訳し、最後に作家がベトナム語で書き留めるという、翻訳の往復プロセスを経ています。
こうして収集された物語や記憶は、やがて作家によって「編み図」に翻訳されました。しかし、その図はしばしば不完全で、明確な像を示さないこともあります。残像はあるが明瞭ではない──そんな記憶の一形態を想起させます。窓辺に設置された本作は、自然光のもとで一日の中に現れては消え、太陽のリズムとともに姿を変えます。
《circulation |循環》 陶芸
「循環」という言葉は、変化する事象が繰り返されることを意味します。この言葉から着想を得た作家は、近隣で改修中の築百年の古民家から古材を集め、それを焼いて灰とし、その灰を釉薬に用いて日用品の陶器を制作しました。木が木材となり、木材が家となり、やがて灰へ、そして灰が日用品を覆う釉薬となる──物質の循環です。過去が現在へと変容し、持続しつつも反復し、車輪の軸のように回り戻る運動を示しています。

リン・サン | Linh San
ベトナムを拠点とする領域横断型のアーティスト。ハノイ教育大学で文学の学士号を取得し、詩、映像、陶芸など多岐にわたる表現を手がける。彼女の作品では、日常における詩的で素朴で思索的な瞬間が描かれている。
リンの文学作品は散文詩の形をとることが多く、思考やイメージが絶え間なく流れ、想像力によって物語や感情と結びつく彼女の思考を反映している。彼女の詩は The Margins、Poetry Translation Centre、およびさまざまな作品集に掲載されている。また、短編映画はハノイ・ドイツ文化センター、タイグエン大学、インドネシア国立博物館などで上映されている。2022年、ハノイの Á Space にて初の個展“no longer holding a cloud”を開催。陶芸の分野では、素材との対話を通じて、伝統的な様式にとらわれず表現の枠を広げようと探求している。彼女の陶芸作品では、粘土の可能性を探り、異なる素材との融合を試みるとともに、技術と素材が変化していく様子にも着目している。2023年には、新進アーティストとして“Prince Claus Seed Awards”を受賞。
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