EXPO PLL Talks
EXPO PLLトークス
〈アーカイブ動画公開〉
小橋賢児氏が登壇 EXPO PLL Talks
「アート&インパクト:イノベーターと共に考えるアフター万博の世界」vol.15
第15回目の開催となる今回は、ゲストに大阪・関西万博催事企画プロデューサーを務める小橋賢児氏(The Human Miracle株式会社代表取締役/クリエイティブディレクター)をお迎えしました。俳優業を経てイベントプロデューサーへと転身した異色の経歴を持つ小橋氏とともに、そのキャリアの変遷や、イベントが持つ「人生を変える力」について探求しました。
当日のイベントの様子は公式YouTubeチャンネルにてご視聴いただけます。
小橋賢児が語る「万博に込める“気づき”のデザイン」
1. 俳優からプロデューサーへの転身ストーリー
Q. 俳優からプロデューサーに転身されたきっかけを教えてください。
実は俳優もプロデューサーも、僕がなりたくて目指したものではありません。8歳のとき、好きなテレビ番組に観覧希望と勘違いして応募したのがきっかけで芸能界に入りました。でも俳優としての活動が長くなるにつれ、次第に "have to"、こうあらねばならないという思考に囚われていったんです。心がどんどん苦しくなって、あるとき限界を感じ、27歳で俳優を休業しました。そこから世界を旅して、自分を見つめ直す時間が始まりました。そして俳優時代の後半は、まるで生きながらにして死んでいるような感覚を味わっていました。表面的には華やかでも、心の奥底では自分が自分でないような、不感症のロボットのような状態です。だからこそ、俳優をやめて世界へ飛び出すという決断は、恐怖でもあり希望でもあったのです。その経験が、今の僕の価値観やクリエイティブの源泉になっています。旅に出て初めて自分自身と向き合い、自分が本当に何をしたいのか、どう生きたいのかを問い直す時間となりました。その経験がなければ、今の僕は存在しなかったと思います。
2. 世界放浪と価値観の変化
Q. 世界を旅した経験が、その後の活動にどう影響しましたか?
ネパールでの経験は大きかったです。現地で出会った同い年の青年が、家族を守るために今を必死で生きている姿に衝撃を受けました。僕は過去や未来に囚われて今を生きていなかった。悔しさと情けなさで号泣しました。その体験が「今を生きる」ことの大切さに気づく大きな転機となりました。また、世界を旅する中で多様な文化や価値観、人々の暮らしぶりに触れたことが、僕にとっての大きな学びでした。何が豊かさなのか、何が幸せなのか。物質的な豊かさでは測れないものが世界にはたくさんある。そうした感覚は、後のイベントプロデュースにも大きく影響を与えています。旅は僕にとって感情のリハビリであり、自分を取り戻す時間でもありました。さらに旅の中で、自分自身の直感や感情に素直になることの重要性を学びました。それは人との出会いや新しい体験を受け入れる大切な姿勢でもあり、現在の僕の生き方にも通じています。世界を旅したことで、目の前の現実をありのままに受け止め、そこから何を学び、どう行動するかを考える力が養われました。これがその後の僕のクリエイティブ活動やプロデュースに大きな影響を与え続けています。
3. イベントプロデュースの原点と挑戦
Q. イベントプロデューサーとしての原点は?
日本に帰国して、まずは自分を治すことから始めました。その中で30歳の誕生日を機に、自分のためではなく来てくれる人への感謝の場を作ろうとイベントを企画しました。ノウハウも経験もゼロでしたが、仲間に支えられながら作り上げたそのイベントが、僕のプロデュースの原点です。そこから少しずつ経験を積み重ねていきました。この最初のイベントでは、どうやったら来てくれる人が楽しめるか、感動できるかをとことん考えました。準備の過程で生まれるトラブルや不安、仲間との協働など、すべてが自分にとって貴重な学びでした。やがてその場づくりの喜びが、自分のやりたいことの核心へと変わっていきました。イベントプロデュースとは、人を喜ばせること、自分を表現すること、社会とつながることなのだと気づいたのです。あの経験があったからこそ、僕は「人の人生が変わるきっかけをつくる」ことを仕事にしようと思えたのです。
4. フェス・ブランドイベントからULTRA JAPANへ
Q. ULTRA JAPANの立ち上げはどのように?
A. イベントを作るうちに企業からの依頼も増え、ブランドイベントのディレクションなどを手がけるようになりました。そんな中、アメリカで体験した「Ultra Music Festival」に衝撃を受け、日本での開催を夢見て動き始めたんです。ひょんな出会いから日本開催の話が進み、僕がクリエイティブディレクターとして参加することになりました。音楽やフェスが人の人生を変える場になることを強く信じていました。ULTRA JAPANの立ち上げは、当時の日本では前例のない挑戦でした。法律の問題、近隣住民への配慮、スポンサー探し、すべてが未知数。でも僕はフェスが持つ可能性を信じていました。音楽という共通言語を通じて、人はつながり、新しい感情や価値観に出会える。そうした場を日本にも作りたかったんです。その情熱が、多くの人を巻き込み、大きなフェスへと成長していきました。挑戦は常にリスクを伴いますが、挑戦しなければ新しい価値は生まれないと僕は信じています。
5. パラリンピック・万博にかける思い
Q. 東京2020パラリンピックの経験はどのようなものでしたか?
A. パラリンピック閉会式のショーディレクターを務めましたが、限られた制約の中でどこまで表現できるか、本当にしびれる経験でした。その挑戦の延長線上に今回の大阪・関西万博があります。僕の役割は、催事企画プロデューサーとして、万博という舞台を使って多くの人に「気づき」のきっかけを届けることだと考えています。パラリンピックでは多様性と共生が大きなテーマでした。あの経験は、僕にとっても新しい視点をもたらしました。人が自分らしく生きられる社会とは何か。その問いは、万博でも継続しています。万博は世界中から人が集まる舞台。その中で、日本が持つ「結ぶ」文化や多様性を受け入れる精神を発信し、新しい未来をともに創っていくことが僕の使命だと考えています。イベントは瞬間的なものに見えますが、その裏にあるメッセージや感情は人の中に深く残り、未来への行動を促す力があると信じています。
6. 万博が描く未来社会と個人の可能性にかける思い
Q. 万博で実現したいこと、そしてその先に見据える未来とは?
万博はゴールではなく、大きな「オポチュニティ(機会)」です。参加する人が、自分自身の可能性や新しい世界に出会うきっかけになることを願っています。祭りやフェスティバルのように、出会いと気づきが人を変え、行動を変え、未来を変えていく。その連鎖が生まれることこそ、僕がこの万博で目指す最大のビジョンです。日本の「結ぶ」文化を活かし、世界がもっと調和と多様性にあふれる未来社会へと向かっていけたらと願っています。万博をきっかけに日本全国が活性化し、人々が地域や自然に目を向け、そして世界とつながる。そんな未来を一人ひとりが描いていけるように。僕自身もこれまでの経験を活かし、これからも挑戦し続けるつもりです。人生は自分でクリエイトするもの。万博がその一歩となることを心から願っています。人と人が出会い、共鳴し、行動を起こすきっかけに満ちた場を創ること。それがプロデューサーとしての僕の使命だと、強く感じています。
※本記事の内容は、動画からの抜粋・要約に基づいて作成されています。表現やニュアンスに一部差異が生じる可能性がございますので、正確な情報をご確認いただく際は、ぜひ本編動画をご視聴ください。
イベント概要
日時:2025年2月19日(水)
会場:東京建物株式会社本社ビル Brillia Lounge
ゲスト:小橋賢児氏(大阪・関西万博催事企画プロデューサー、The Human Miracle株式会社 代表取締役 兼 クリエイティブディレクター)
モデレーター:鈴木大輔(株式会社アートローグ 代表取締役CEO、Study:大阪関西国際芸術祭 総合プロデューサー)
主催:公益財団法人2025日本国際博覧会協会、大阪関西国際芸術祭実行委員会(株式会社アートローグ内)
プロフィール

小橋賢児(KOHASHI Kenji)
大阪・関西万博催事企画プロデューサー
The Human Miracle株式会社 代表取締役 兼 クリエイティブディレクター
1979年、東京都生まれ。1988年に俳優としてデビューし、数多くの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止して世界中を旅する。帰国後、『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを務め、国内外で大きな成功を収める。
ドローンを使用した夜空のスペクタクルショー『CONTACT』は、日本イベントアワード(JACEイベントアワード)にて最優秀賞の経済産業大臣賞を受賞。
2021年には東京2020パラリンピック競技大会閉会式のショーディレクターを務め、2025年開催予定の日本国際博覧会(大阪・関西万博)では催事企画プロデューサーに就任。また、2025年のカウントダウンイベントでは、日本最大規模となる2025機のドローンを使用したショーを企画・演出し、日本のエンターテイメントシーンに新たな可能性を提示した。(2025年1月時点) その他、地方創生や都市開発にも携わり、時代に新しい価値を提供し続けている。

鈴木大輔(SUZUKI Daisuke)
株式会社アートローグ 代表取締役CEO、Study : 大阪関西国際芸術祭 総合プロデューサー。
1977年11月3日 文化の日生まれ。大阪市立大学都市研究プラザのグローバルCOEに於ける研究プロジェクトを経て起業。2014年グッドデザイン賞受賞、2015年度 京都大学GTEP プログラム(文科省)ファイナリスト、2016年ミライノピッチ(ビジネスコンテスト:総務省近畿総合通信局)においてグローバルイノベーションに値するOIH 賞を受賞。
2017年7月7日「Arts for Human and Planet」をビジョンに株式会社アートローグ設立、代表取締役CEO就任。
2025年の大阪・関西万博を機に世界最大規模の「大阪関西国際芸術祭」の創設を目指し、2022年1~2月「Study: 大阪関西国際芸術祭」を開催。
アートを利活用し、より良い社会の実現を目指すアートイノベーター。
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